台湾
1kWあたり約500元の補助金。非営利団体PV Cycleが廃棄物を管理し、専門ネットワークと回収ステーションを設置。
EU
厳格なリサイクル基準と環境保護政策で知られ、専用の回収ステーションの設置やリサイクル業者への補助金を奨励。
太陽光パネルのリサイクルが直面する課題
世界的に太陽光発電の導入が進む中、使用済み太陽光パネルの廃棄とリサイクルの課題がますます顕在化しています。制度や政策の面では、欧州連合(EU)が「廃電気電子機器指令(WEEE指令)」を制定し、メーカーにリサイクルの責任を課していますが、加盟国間での実施や監督には差があり、中小企業にとっては費用負担が重いのが現状です。米国では連邦レベルで統一的な規制がなく、大半の州で強制的なリサイクル制度が整備されておらず、ワシントン州など一部の州のみが包括的な制度を持っています。日本にも廃棄物処理関連の法規はありますが、リサイクルは主に自主的に行われ、自治体も専用施設をほとんど有していません。
経済性の面では、高いリサイクルコストが各国共通の課題です。世界最大のパネル生産・設置国である中国では、リサイクル体制がまだ十分に整備されておらず、回収資材の価値が低いため、企業の参入意欲が低い状況です。米国でも同様で、特に遠隔地では輸送や解体コストが資材価値を上回るため、経済的に成り立ちにくいです。台湾は制度の整備を進めていますが、廃棄量が分散しており、規模の経済が働かず、リサイクル業者の運営負担が大きくなっています。
技術面では、多層構造や複合素材が解体と分離を難しくしています。EUは比較的高度な技術を有していますが、高純度シリコンやレアメタルの回収には依然として高コストがかかり、有害金属を含む薄膜型パネルの処理能力も不足しています。日本ではアルミ枠やガラスの回収が中心で、レアメタルの回収率は低いです。中国では有害物質処理の標準化が不十分で、環境汚染のリスクがあります。
産業チェーンや責任分担の面では、米国では生産者責任延長制度(EPR)が十分に普及しておらず、責任が施工業者やユーザーに委ねられています。台湾では太陽光パネルを「指定回収物」に分類していますが、実際には回収ネットワークが不完全で、責任や資金源の明確化が進んでいません。
将来を見据えると、2030年以降は廃棄パネルの数が急増します。EUでは初の大規模な撤去ラッシュが予想され、処理能力への負荷が懸念されます。日本は2040年までに大量の廃棄が見込まれ、経済的インセンティブがなければ不法投棄の恐れがあります。中国では2035年以降に廃棄が爆発的に増加し、政策と技術の両面で改善がなければ、環境への負担が深刻化する可能性があります。